山陰合同銀行

My Life is... #66

#66 簸上清酒合名会社 恩田達也さん

#66 簸上清酒合名会社 恩田達也さん

製造元として商品を届ける誇りとやりがい

  • ─ 現在の会社に入られたきっかけは?

     雲南市出身で、高校卒業後に県内の製造工場に就職しました。その後、酒類の卸業に転職してから営業と配達を担当し、奥出雲町を中心に回っていました。10数年務めた後、その卸会社が廃業することになった際、取引先として交流のあった簸上清酒の社長と専務から「うちで働かないか」と声をかけていただきました。
     卸業では、完成された商品を受け取って酒販店やお店に販売していましたが、製造元として自分たちで造ったお酒をお客様にお届けする方が、商品に対する自信や責任を持って仕事に取り組めて、やりがいも感じられるのではないかと思いお世話になることにしました。簸上清酒は地元でずっと愛されている酒蔵ですし、卸業の営業として長年かかわらせていただいていたので、社長をはじめ従業員の皆さんの人柄や職場の雰囲気の良さも知っていたので、「ぜひ挑戦させてください」と2018年に入社しました。

    ─ 仕事内容を教えてください。

     現在は、壜詰め部門の部門長として、出来上がったお酒を壜に充填する作業を中心に行っています。簸上清酒は300年以上前からこの地で酒を醸し続けている老舗蔵です。現在では全国の半数以上の蔵元が仕込みに使用している「泡無酵母」の発祥の蔵としても広く知られています。以前はお酒が出来上がるまでの工程を知らないまま商品を売る立場でしたが、製造過程に関わるようになったことで、簸上清酒の看板を担う一員として、確かな商品をお客様にお届けするために、安心安全な環境で間違いのない作業を徹底しています。
     壜詰め作業は機械を使って行いますが、以前、製造工場で働いていた時に機械を扱っていた経験が役立ち、初めての作業でありましたがスムーズに慣れることができました。また、卸業の営業として奥出雲町を担当していたので、近隣の酒販店やお店をよく知っていることから、時々、商品の配達作業も行っています。配達で訪れたお店で「これだけ売れたよ」「評判いいよ」とお客様の声を教えていただけるとうれしいですね。蔵人の皆さんにも伝えて、製造元としての喜びを共有しています。

安心安全な環境で間違いのない作業を徹底

  • ─ 仕事で心がけていることは何ですか?

     安心安全な環境で間違いのない作業を行うために、先輩や同僚とお互いに意見を出し合うようにしています。現在は、私が最も社歴の短い社員になります。年下の先輩社員から大ベテランの蔵人の方まで幅広い方がいらっしゃいますが、分からないことは素直に聞いて、遠慮なく皆さんから指導していただけるように、普段からコミュニケーションを取るようにしています。
     卸業で酒類業界に長く関わっていたとはいえ、まだ経験が足りず、未熟な点も多々あると自覚しています。全国や海外でも高く評価されるお酒造りに携わり、製造元として誇りの持てる仕事にやりがいを感じています。皆さんのお話を聞いて、現場で体を動かしながら勉強を重ね、もっと頼られる存在になっていけたらと思っています。

    ─ 現在の職場のいいところを教えてください。

     社員全員がよりよい商品をお届けするために真剣に酒造りに取り組みつつ、時には笑いながら楽しく仕事ができるところです。皆さんが、どうしたらお客様が喜んでくれるかを常に考えておられます。でも、休憩中やプライベートではお互いの家族や趣味の話で盛り上がって、オンとオフのメリハリがしっかりある職場だと思います。卸業の営業で関わっていた時から感じていましたが、会社の皆さんをはじめ奥出雲町はやさしい方が多く、いつも気持ちよく過ごさせてもらっています。
     また、社長や専務を中心に、従業員のことを考えて職場環境の改善に取り組まれ、伝統の酒造りを守りながら、時代に合わせて仕事の仕方の見直しを進めておられます。社長や専務がいつも声をかけてくださるので、こちらの意見も出しやすい風通しの良さを感じています。これまで他業種で働いてきた経験を生かし、職場環境の改善にも貢献していけたらと考えています。


  • 出来上がったお酒の瓶詰

  • 出荷前の最終チェック

  • 酒販店様にお届けのための搬出作業

感謝の気持ちを忘れずに地道に前へ進みたい

  • ─ プライベートなことを教えてください。

     子どもが3人いて、長男は大学2年生、次男は高校3年生、長女は中学校1年生になりました。私が学生時代にバレーボールをしていた影響もあってか、長男と次男は小学校からバレーボールを始めて、クラブチームに所属していました。私も保護者の一人として指導に参加し、子どもたちにバレーボールを教えていました。上の2人は勉強に集中するため、バレーボールから離れましたが、長女は中学校でバレーボールを始めたばかりなので、休日は妻と2人で練習を見に行ったり、試合を応援しに行ったりしています。
     長男は今、看護師を目指して大学で勉強に励んでいます。次男も「美容師になりたい」と、専門学校への進学に向けて頑張っています。子どもたちがそれぞれの目標を見つけて自分の道を進んでいく姿に、親として頼もしく感じますし、また「自分も負けていられない」と刺激を受けています。これまで子どもたちの成長を見るのが夫婦の楽しみだったので、子どもたちが巣立った後、どうやって過ごそうかと妻と話しているところです。その時は夫婦で楽しめる趣味を見つけたいです。

    ─ 将来のビジョンを教えてください。

     仕事では、社長から今年は仕込みにも入るようにと言われています。酒造りは転換期を迎えていて、これまでのように仕込みを蔵人に任せきりにするのではなく、従業員みんながサポートし合える体制をつくっていくことが求められています。長い年月をかけて培ってこられた職人の技術を身に付けるのは至難の業だと思いますが、私も簸上清酒の一員として仕込みの現場に加わり、酒造りの名人である出雲杜氏の仕事を間近で見ながら、少しずつでも前に進んでいけたらと考えています。
     プライベートでは、長男がもうすぐ成人を迎えるので、長男と一緒に簸上清酒のお酒で乾杯したいです。そして、「うちの酒だぞ」と自慢したいですね。子どもたちの夢を応援するためにも、まだまだ元気で働いていかなければなりません。こうやって、今、簸上清酒でイキイキと働けているのも、3年前に社長と専務に声をかけいただいたお陰だと感謝しています。そして、一緒に仕事する皆さんや、簸上清酒のお酒を飲んでくださる皆さん、商品を取り扱ってくださる小売店や飲食店の皆さん、共に人生を過ごしてきた妻と子どもたち―、自分に関わってくれる全ての人に感謝の気持ちでいっぱいです。これからも感謝の気持ちを忘れず、自分の成長を信じて頑張っていきたいです。


  • 学生時代から続けているバレーボール

  • 子どもたちと花火

  • 家族で夜桜見学

  • 簸上清酒合名会社

    斐伊川の源流に位置し、古代よりたたら製鉄で栄えた奥出雲町。簸上清酒合名会社は、神話「ヤマタノオロチ」の舞台として知られ、出雲国風土記にも記されている船通山の伏流水を仕込み水に、地元産の酒造好適米を使って、酒造りの名人である出雲杜氏が伝統の技を振るう老舗蔵です。仕込み時に泡が立たない「泡無酵母」の発祥の蔵としても知られています。真摯に水と米に向き合い、日々精進して醸した酒は、国内の鑑評会や品評会で数々の優秀な賞を受けているだけでなく、フランスやイギリス、香港などの品評会でも高い評価をいただいています。3年前に発売した「七冠馬 純米大吟醸」も、たくさんの方にご好評いただいている一本です。