山陰合同銀行

My Life is... #44

#44 フワフワ かわにしよしとさん

#44 フワフワ かわにしよしとさん

倉吉から上京、
若い頃から雑誌や新聞で似顔絵やイラストを数多く描いてきた

  • ─ 漫画家になられたきっかけは?

     もともと小学生の頃から絵を描くのが好きで、版画家の長谷川富三郎先生(倉吉市明倫小学校勤務)に褒められたことがきっかけでした。
     東京の美大を目指すための浪人中にアニメーション制作のアルバイトをしたことで、漫画や似顔絵といった世界へ足を踏み入れました。当時はデッサンなど美大受験の基本的なことを学んでいたはずなのに、あっという間に似顔絵やイラストの世界へと飛び込んでしまい、若い頃から人の出会いに影響されつつも自分の信念(?)でフワフワ人生を歩んできたとも言えますね(笑)
     20代後半くらいまでに主婦の友社、ぴあ、モーターマガジン社、報知新聞、スコラなどで似顔絵イラストやパロディー漫画を描き、いくつかの賞もいただきました。
     その後40代になり読売新聞で似顔絵や政治漫画などを12年間担当させていただき、1000点以上ほどの作品を描きました。現在ではよみうりカルチャーセンターでの講師や、小品展への出展等も行っています。

    ─ 仕事をする上で心がけていること、また息抜きは何ですか?

     制作にはタブレットやパソコンを使い、自宅の仕事部屋でほぼ毎日絵を描いています。似顔絵を描くときには“うまい絵よりも良い絵を、感心されるより感動される絵を”ということを心がけています。これは、形として似ているということはもとより、モデルの人間性を含ませ、さらにそれをいきいきと品よく仕上げること、そして何度でも見ていて飽きない作品に仕上げるということです。似顔絵を見ていてなんとなく生理的に「いやな人」とは、決して思わせたくないんです。
     息抜きは「ウクレレ」。自慢の一台セニーザを弾いて気分転換して、そしてまたタブレットに向かうという毎日です。

70歳にして夢叶った、絵本作家への第一歩

  • ─ 絵本作家としてのデビューを実現し、夢を叶えた今思うことは?

     似顔絵や漫画を主に活動した40数年を経た今、子どもの頃に倉吉で出会った長谷川先生と約束した「絵本を描きます」という想いを今年70歳にしてやっと叶えることが出来たのは本当に感慨深いものがあります。また、いろいろな方から漫画では無かった新鮮な反響があったこと、絵本原作作家でもある直木賞作家のねじめ正一さんから励ましの言葉をいただけたことは本当に嬉しかったです。似顔絵は、あくまでもその人自身ありきで描くものです。その人の人間性が骨組みとなり、品性などを表現しながらみんなから好感を持ってもらえるような仕上がりを目指します。一方、絵本の世界は自分が一番楽しみながら描ける場所です。特に初めて描いた絵本「いろいろくにのいろいろさん」は5つの色をテーマに、飛び出してくる動物たちを自分の感覚のままに表現してみました。絵本というものは、モデルがいる似顔絵や世相やテーマを題材とする漫画とは違い、自己完結の世界で創作活動ができるジャンルです。今までとはまた違った描き方を表現できる楽しみが生まれています。

    ─ 今年の山陰合同銀行「夏のうちわ」のイラストについて教えてください

     恒例となっている山陰合同銀行が配布する夏のうちわは、毎年沢山の人に喜んでいただいていると聞いています。今年は自分が携われることになり、地元へ貢献できる機会となり、とても嬉しく思います。
     うちわの表裏には山陰を象徴する、私が印象的な風景を描きました。山陰らしいアゴをユーモラスに表現して、遠くの島は「島根半島か、隠岐の島か」と想像していただけるように。また夏の夜空に大きく開いた花火は水郷祭をイメージし、みんなが大好きな山陰の夏を自分なりに表現しています。
     実は絵本の次回作にもいろんな人が感じる「夏」、あるいは私が子供の頃に感じた「夏」、海や甲子園、お盆、戦争など、楽と苦、生と死など、受け取る人によって幅広くまた象徴的な季節である夏をテーマに描けたらいいなと思っています。

ふるさとへの気持ちを原動力に、自分に正直に向き合う日々を送りたい

  • ─ ふるさと「倉吉」への想いを教えてください

     東京に住んで、そして年齢を経るごとにふるさとへの気持ちは高まっていきますね。倉吉で過ごした子供の頃の風景は今でもはっきり記憶しています。それは昭和30年代、田んぼが広がり水のきれいな風景、打吹山と大山が見えるあの景色です。今では県人会の会報に描かせてもらったり、ふるさとの人々と一緒に行っている「まんが似顔絵市民フォーラム」により、鳥取県中部から似顔絵の楽しさを発信するという活動などを通し、故郷に関われることにやりがいを感じています。母校である倉吉東高校の100年史誌に高校時代の思い出を漫画1ページ載せてもらったことも自分史上の大事件。ほろ苦くも変に誇らしくも感じています。
     しかしそんな自分も上京したての頃、田舎者と思われないために方言だけは何とか早めに直してクリアしたものの、(田舎)顔とのギャップは未だクリアできないままだった…、そんな思い出もあります(笑)
     毎年必ず倉吉には帰省するのですが、その時にも島根県にもよく足を運びます。出雲大社、石見銀山、そして松江城がすごく好きです。松本城も好きなのですが松江城の雰囲気はそれと似ていてとてもいい。いつか倉吉へ戻りたい気持ちもあり、その時には島根のスポットもたくさんまわってみたいと思っています。
     自分を育ててくれた倉吉や、いろんな人や物に出会った東京という環境から受けた多くの刺激を糧に、成長や変化と共にその時々の自分らしさを盛り込んだ作品を生み出す、それこそが私のフワフワ人生かもしれません。


  • 愛用のウクレレ

  • チャリティー原画展にて

  • これまで描いた作品たち

  • かわにしよしと

    元原稿:漫画家。1948年鳥取県倉吉市出身、東京在住。読売新聞日曜版・政治面及び年鑑にて似顔絵や政治漫画、スーパージャンプ、漫画サンデー、まんがタイム、コミックα、麻雀ゴラク等での連載、また数多くの雑誌新聞等で似顔絵、漫画を執筆。現代童画会展2年連続入選、ビッグコミック・スペリオール4コマ漫画最優秀新人賞受賞。ミニミニ絵画展ユニーク賞受賞。2018年、70歳にして絵本作家としてデビューする。日本漫画家協会会員。
  • かわにしよしと