山陰合同銀行

My Life is... #02

楽 邑南町役場 商工観光課観光振興 係長 寺本英仁

楽 邑南町役場 商工観光課観光振興 係長 寺本英仁

外へ売るより、まず生産者と向き合う。注目の地産地消レストラン!

  • ─ 「A級グルメ」の町づくりとは?
     邑南町は11年前に町村合併した町で、人口減少の歯止めは大きな課題でした。地域の食材をPRするために、例えば石見和牛の販路開拓では東京の有名ホテルや海外にも足を運びましたが、石見和牛の生産は年間200頭で条件も限られます。外へ売るだけでは地域に還元できない、生産者が本当に喜ぶことなのかという疑問が出てきました。生産者や町の人々が地元に誇りをもてるようになって欲しい、そんな想いから「A級グルメのブランド化」事業を展開することになります。
    産直市にネット通販、さらには観光協会運営の本格レストラン、こうした邑南町の取り組みは地方創生の優良事例として新聞やテレビなどのメディアに数多く取り上げられてきました。視察もたくさん来られますし、こちらが出張して講演活動も行っています。

    ─ 苦労されたこと、嬉しかったことで印象深いのは?
     苦労も喜びも大きかったのは平成23年5月に素材工房ajikura(里山イタリアンAJIKURA)がオープンした時。スタッフ、予算、そして経験もない中で観光協会の職員と手づくりで立ち上げたレストランです。コンセプトは「ここでしか味わえない」地産地消。そして特徴となるのが「耕すシェフ研修制度」です。広島や東京など都会から移住してきて農業や調理を習得するというもの。レストランでは腕利きのシェフの元で調理を学び、農園では地元農家の指導で自ら野菜を栽培できるシステムになっています。
     新しい取り組みで注目してもらいたいのは有機無農薬のニンニクやタマネギ、西洋野菜、ハーブの機能性・栄養価をデータ化した野菜ブランド「インナービュティーベジ」。「農の学校」とレストランや高級スーパーの協力で開発する予定です。

仕事はトライ&エラーの繰り返し、何事も楽しむことが大切。

  • ─ ふだん心がけていることは何ですか?
     「楽」にすることです。人が大変だと思う仕事も、時間・体力的にハードな状況でも、自分に「楽だ、楽だ」と言い聞かせます。楽しいのもしんどいのも本人次第ですから。ちなみに私の父は県の職員だったんですが、退職後60歳を過ぎて石見和牛の放牧を始めました。当時、私が奮闘する姿を見ていたのもあるんでしょうね。趣味で始めた感じでしたが、今や町内有数の石見和牛の担い手です。最近では地域のおじさんが集まってとにかくなまけるというコンセプトの「楽農会」を立ち上げました(笑)。何事も楽しんでやるのが大切ですね。
     そもそも仕事は7割が成功で3割が失敗のトライ&エラー。僕自身、上司に言われたことだけやるという仕事はできません。だから若い職員が新しい企画や発想を試みれば、とにかく、実践できる環境づくりに徹し、成果を見つけて褒めることを心がけています。
  • ─ 寺本さんのプライベートの顔は?
     年に2回、冬と夏に1週間ずつ休みをとって、海外や沖縄の海へ撮影旅行に。大学時代はダイビングのインストラクター資格も取ってプロの水中カメラマンを目指していましたし、今でもザトウクジラやイルカ、マンタなどの大物狙いで水中写真を撮影してます。地元にいると仕事から離れられないですから、区切りをつけるための休みでもあります。

  • 石見和牛は、年間200頭の限定生産

  • 趣味の水中写真1

  • 趣味の水中写真2

子どもたちに残す故郷。帰る町と家族を、未来へつなぐ。

  • ─ お家ではどんなお父さんですか?
     子育ては妻に任せっぱなし。仕事が忙しく、家族と過ごす時間が少ないので、子どもたちは僕のことをテレビや新聞で見る方が多いかな? それでも夫婦喧嘩が一度もないのは大家族だからでしょうか。僕と妻と子どもたち、両親や叔母もいる大家族。ご飯は好きな場所で食べてお風呂も好きな時間に入る、子どもの成績に私も妻も無関心。ざっくばらんな生活だから喧嘩もないんです。ただ、食べ物のことは親が子どもにちゃんと教えるべきだと思いますから、わが家の朝食のパンやおやつは手づくり。おばあちゃんの味噌づくりも子どもが一緒に手伝っていますよ。

    ─ 将来の夢を教えてください。
     子どもが将来大人になって邑南町で活躍してくれることですね。私も地元で育って高校は広島、大学は東京農業大学へ進学しました。大学時代は東京でサラリーマンか水中カメラマンになろうと思っていたんです。そんな大学時代、地元から送ってもらった石見和牛を友達と食べた時に皆が「美味しい!」と喜んでくれて、故郷に誇りを感じました。卒業後の就職を考えた時、やっぱり生まれたところに帰りたいと思ったんです。
     自分の子どもが成長して県外へ出ても地元に戻って住めとは言わないですが、帰る場所はちゃんと残しておきたい。帰る家、家族があれば地域の良い文化が残っていくはずです。
     仕事で地域振興に取り組むうえでも、両親や自分や妻、そして子どもたちの故郷であるこの町を永遠に残していくという強い意志をもっていますし、妻も同じように感じてくれていると思います。

  • 職場での様子

  • 豊かな自然に囲まれた邑南町の風景

  • 有機栽培を行う「ajikura農園」にて

  • 邑南町役場 商工観光課

    邑南町(おおなんちょう)は、島根県の中部に位置し、農業を基幹産業とする人口11,966人の街です(H22国勢調査による)。 本町には、料理愛好家の平野レミさんが大絶賛する年間限定200頭の未経産黒毛和牛「石見和牛」を生産する業者、牛舎を持たない「完全自然放牧」に取り組む酪農家、チョウザメ養殖業者、ピオーネ、さくらんぼ、ブルーベリー農家など小規模ながらも特色のある生産者が点在しています。
  • 邑南町役場