My Life is... #49

#49 写真家 柄木孝志さん

#49 写真家 柄木孝志さん

流れるように辿り着いた山陰で 感動する風景に出会った

  • ─ 柄木さんが山陰へ来られたきっかけは?

     大阪府出身で、大学を卒業した後はスポーツのインストラクターをしていましたが、24歳の時に怪我でインストラクターを退き、雑誌編集社に就職しました。タウン情報誌やグルメ誌などの出版業務に追われて、結構過酷な日々でしたが、写真の撮り方や編集の仕方、モノやコトをアピールする方法など、いろいろなノウハウが身に付きました。
     街に出てネタを探したり、取材したりという現場の仕事にやりがいを感じていたのですが、年数を経て責任のある立場になるとなかなか現場に出られなくなって。そのストレスから、少しずつ本をつくる楽しさを感じられなくなっていました。そんな時に、昔から抱いていた「田舎で暮らしたい」という想いを実現しようと、15年ほど前に辿り着いたのがこの鳥取県米子市でした。
     山陰ではその当時、フリーランスでカメラマンやデザイナー、ライターなどの仕事をしている人がまだまだ少なく、地元の出版社や広告代理店を回っても「ここではあなたのようなやり方では生活できませんよ」とたくさんの方から言われました。それなら自分がそういう仕事をつくっていこうと思い、写真家という道を選びました。

    ─ なぜ、写真家の道を選ばれたのですか?

     米子に来た頃、朝焼けの大山を見てとても感動しました。だけど、周囲の人たちはほとんどそんな景色を知らなかったんです。私は素晴らしい風景に毎日のように感動していましたが、地元の人たちにとっては当たり前になり過ぎていて、その価値を見失ってしまっていると感じました。じゃあ、自分が撮って「こんなにきれいな景色がある」と伝えていこうと思ったのが、写真家としてのスタートです。
     私が最も感動したのは、大山の頂から朝日が昇る様子と、大山の夜に広がる満天の星空です。大山山頂から朝日が昇る「ダイヤモンド大山」という言葉を私がつくり、一冊目の写真集「瞬~matataku~」に、ダイヤモンド大山が撮れる時期とポイントを載せたマップを付けて出版しました。今では、ダイヤモンド大山を撮ろうと、そのポイントに100~200人の人たちがやってきます。星空も鳥取県が「星取県」として大々的に全国に売り出しています。

写真で人を呼び、地域を潤す産業へとつなげる

  • ─ 写真を通じた地域振興にも取り組んでおられますね。

     はい。「大山王国」というサイトを運営するNPO法人に加わり、山陰エリアの観光情報などを広く発信してきました。そういう活動をしていく中で、写真家だけでなく家具や革細工、小物など、ものづくりの職人として生きようとしている人たちと出会い、そんなクリエイティブな仕事をしている人たちも、フリーランスと同じように山陰ではなかなか生業として認められていない現実があると分かりました。そんな状況を何とかしたくて、ものづくりの作家さんたちをプロモーションする仕事も始めました。
     その一つが、大山町の廃校を利用した「山陰sacca 大山ものづくり学校」です。そして、ものづくり学校に来ていた和傘職人の女性の傘のプロモーションと、大山寺の参道で昔から行われていた「お盆の大献灯」という行事をコラボレーションさせたのが「お盆の大献灯 和傘灯り」です。写真家の視点を生かして「インスタ映え」するように空間をデザインし、今ではたくさんの人が訪れるようになりました。
     しかし、きれいな写真で人を引き付けても、ただ人が来るだけでは地域振興に結び付きません。たくさんの人に来てもらった上で、地域にお金を落としてもらう仕組みづくりが必要なんだと気付きました。
     そこで始めたのが「とっとりバーガーフェスタ」です。今年で10回目を迎えて、今や日本最大規模のご当地バーガーの祭典に成長しました。このフェスタでグランプリを取ったほとんどの団体が、参加後、地元で成功しています。地域の活性化の本質は、その場限りの集客や利益にこだわらず、地元の民間人がしっかりお金儲けできる産業をつくることです。その活動が認められて、近年では北海道から沖縄まで、全国10以上の自治体から写真をきっかけとした地域活性化や観光振興をアドバイスする仕事もしています。
     星取県とコラボレーションした「大山星空で遊ぶツアー」も展開中です。このツアーは、日本唯一の撮られるツアーで、ペンライトで文字を書いたりするアクティビティも盛り込んで満足度を高める工夫をしています。

    ─ そのアイデアはどこから湧いてくるのですか?

     恐らく、私が“外の人間”だからだと思います。大山や砂丘も地元の人たちからすると日常の風景かもしれませんが、私たちからすると、大山や砂丘がこんなに身近に見られるなんてものすごく幸せなことで、これを放っておくのはもったいないと思ってしまう。そして、これを発信するのに足りないものは何だろうと考える。そこのアイデアやクリエイティブな視点は東京や大阪で仕事してきた蓄積が生かせていると思っています。
     しかし、いざ何かをしようと思った時には、地元の人たちに寄り添っていろいろなことを教えてもらいながら、自分がこの地域の人間となって一緒に進まないと、何も物事は進みません。“よそ者”の視点と、この地域で生きる者としての視点と、その両輪でやってきました。


  • お盆の大献灯「和傘灯り」

  • 大山まきばみるくの里 星明りの下で

  • ダイヤモンド大山

自分を育ててくれた山陰に恩返ししたい

  • ─ 印象に残っている出来事は? また息抜きは何ですか?

     応援してきた作家さんや、一緒に活動してきた仲間が独り立ちして、新しい事業やビジネスを始める姿を見ると、やってきて良かったなと思います。
     また、2nd.写真集「24hours」では、24時間に移り変わる大山の表情を収めましたが、この写真集を、進学で都会に出る子どもさんにお母さんが持たせたり、転勤で鳥取を離れる同僚に記念として贈ったりしているという話を聞いて、15年追い掛けてきたものが一つの形になったなと感慨深くなりました。
     そうやって夢中で活動してきたので、昔からオンとオフがなくて、基本、プライベートな時間はないですね。写真を撮ることが好きなので、時間が空くと撮影に出掛けてしまいますし。しいて言えば、仕事で出掛けた土地のおいしいものを食べて、温泉に入るのがささやかな楽しみです。他には特に欲しいものもないし、のんびり休みたいとも思わない。逆に何もしていない方が不安になってしまいます。止まると死んでしまうマグロのような性格なんだと思います(笑)。

    ─ 今後の抱負を教えてください。

     山陰にはこんなに美しい風景があると、地元の方たちに気付いてもらいたいです。「ごうぎんカレンダー」には2018年から私の写真を使っていただいていますが、2018年は大山開山1300年の年だったので「お盆の大献灯 和傘灯り」をメインに、各月の大山の表情をデザインしてもらいました。2019年のカレンダーには、山陰でも屈指の規模と美しさを誇る松江水郷祭の花火大会を、宍道湖周辺では一番高い山陰合同銀行本店ビルの展望室から撮影したという、これまでにどこにもなかった写真を、同じアングルから撮った宍道湖の夕景と一緒に使ってもらっています。「ごうぎんカレンダー」のように何気なく触れる写真から、自分たちが日々、暮らしている生活の中に、これだけの風景があると知ってもらいたいです。
     ここに住んでいる人たちに、「10分でも15分でもいいから外に出て景色や空を見てください」と伝えたいです。そうすることで、それまでと違う風景に出会えて、その風景が地元に誇りを持つきっかけになるかもしれません。写真はそういうきっかけを与えてくれるものだと、私は思っています。
     地域を活性化するためには、私がいつまでも同じ事業に関わるのではなく、若い人たちにバトンタッチしていくことが必要です。ものづくり学校は既に後継者に引き継ぎましたし、星空のツアーもガイドを育成していずれは譲る予定です。そうやって若い世代が活躍できるステージの下地をつくるのが、私の仕事だと思っています。
     私という写真家は、山陰で育てていただきました。私を理解し、応援してくださる方々に支えられて、今の私があります。今度は私が支える立場になって、若い人たちがこの地域で誇りを持ってイキイキと暮らしていけるよう、これからも写真を通じてこの地域の魅力を発信し、それに呼応する新たな産業をつくっていきたいです。


  • 2nd.写真集「24hours」の表紙でもある大山での1枚(大山山頂)

  • 大山夏山開き祭り「松明行列」にて

  • 大山にかかるレインボーアーチ(大山放牧場)
柄木撮影エピソード

  • 柄木 孝志(からき たかし)

    写真家・地域活性プロデューサー。1969年に大阪府八尾市で生まれる。15年前に鳥取県米子市にIターン。写真を通して山陰の風景の素晴らしさを発信し続け、新たな山陰の美しさが広く注目されるきっかけをつくってきた。その一方で、地域おこし事業に携わり、近年ではその手腕が買われて全国10以上の自治体で地域活性化のアドバイザーとしても活躍を見せている。
  • 柄木孝志
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