My Life is... #03

こどもに誇れるまちづくり  尾﨑貴道 島根県川本町

こどもに誇れるまちづくり  尾﨑貴道 島根県川本町

この町はいま、健康に良いと話題のエゴマ油で注目を集めています。

  • ─ エゴマの栽培はいつ頃から始まったのですか?
     きっかけとなったのは平成14年。今も生産してくださっている〈川本エゴマの会〉の竹下会長が高齢者大学の旅行で飛騨高山を訪れた際、朝市でアブラエ(エゴマ)に出会って栽培を始められました。「つくって食べて元気になろう!」と、竹下会長をはじめとする町内外の生産者によって栽培や料理教室などの普及活動が行われてきました。平成16年から搾油もスタートし、平成22年には町の転作奨励振興作物に指定されています。県や医大の後押しもあり、テレビなどメディアで取り上げられることも多くなって、いまやエゴマは川本ブランドとして注目されるようになりました。

    ─ エゴマブームに川本町の様子はどうですか。
     川本町の特産としては、古くから親しまれている西条柿、夏になると江の川のツガニ(モクズガニ)もありますが、今もっとも注目されているのはやはり、エゴマ油。昨春から品薄状態が続いているほど人気があります。道の駅でも毎日は販売できませんし、限られた販売日には長蛇の列ができるほどです。
     取材や視察も増えていますよ。私の前任の頃は、エゴマは良いものだから売れるはずだと関東での販路開拓やテレビでのPR活動に奔走していましたが、今はテレビの取材依頼も県外からの視察も向こうから続々とやってくる状況です。

地域振興の要であるエゴマの生産を安定させるために。

  • ─ 尾﨑さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか。
     私は今年から産業振興課の農林振興係に配属となりました。私にとって、初めての産業振興畑です。しかも農林振興係は私を含めて2名だけ。エゴマをはじめとする農作物に、森林整備・鳥獣被害対策・川の鮎などの漁業まで、担当する業務は多岐にわたります。
     川本町のかつての人口は約5500人でしたが現在は3500人にまで減少しましたし、職員も少数です。でも小さな町だからこそ、一人で考えるのではなく住民の協力を得ながら進めていくことが大事だと思います。職場は楽しく、何でも相談できる環境ですし、エゴマ生産者の皆さんや鳥獣被害の相談いただく方々、町の皆さんとできるだけ直接お会いして話すことを心がけています。 また、今年から「だからこそ、川本。」という川本町のキャッチコピーを作成しました。多くの方に「~だからこそ、川本。」と思っていただけるまちづくりを進めていきたいと思っています。
  • ─ 今後の課題、挑戦したいことを教えてください。
     品薄状態のエゴマの生産量を上げることが課題。本日の取材に同席いただいている上鉄穴さんも10年前から生産を始められていますが、現在は大手を断ってリピーターを優先するなどの対応をされていますし、もっと生産を増やしていくことができたら良いのですが……
     やはり品質は落とせません。これまでエゴマの振興に大いに貢献してくださった竹下会長も「エゴマのおいしさを強調したい」と仰っていますし、生産者と協力しながら、品質を落とさずに生産を増やす取り組みを続けていきます。現在、町内外の団体を含めた生産者は100名ほどですが、高齢化が進んでいるのでまずは新たな若い世代の生産者を確保することですね。
     目標は、エゴマを単なる特産品にするのではなく、エゴマで生計が成り立つように安定させることです。

  • 職場での様子(デスクワーク)

  • 生産者の方と(左:竹下さん「川本エゴマの会会長」 中:尾﨑さん 右:上鉄穴さん)

  • 地域の会「だけぇ・かわもと」の皆さんと

子どもたちが誇れる町づくりを。遊びながら地域の魅力を体験!

  • ─ 休日は何をして過ごしますか?
     高校時代まで野球をやっていて職場の大会にも出たりしていましたが、年齢による体力の衰えは否めません(笑) 高校の練習の時から使っていた野球のボールは車の中に置いてあって、私の宝物です。
     それから最近は、「だけぇ・かわもと」という地域の会を発足しました。子どもたちが将来、県外へ出てもまたいつか川本町に戻ってきてほしいという願いを込めています。役場にも同級生が多いのですが、そうした私たち同世代の若いグループで農地を借りて子どもたちと一緒にエゴマを栽培したり、エゴマの葉を乾燥させてお餅をついて食べたり、広島の三次と島根の江津を結ぶ地元のローカル線「三江線」のイベントに参加したりと、遊びながら都会にはない田舎の良さが体験できる活動を始めました。

    ─ 尾﨑さんの将来の夢を教えてください。
     子どもから「何でここに住んでるの?」と聞かれたことがありますが、考えてみると役場に5人、他で仕事をしている友人も含め同級生がけっこう町に戻って仕事をしているんですよ。私自身、大学時代は大阪にいて、川本町に戻ってきました。「田舎の方が落ち着いて暮らせる」「実家の農業を手伝うため」といった理由は色々ありましたが、故郷に友達がいるというのも大きかったですね。
     自分の子どもにも「都会へ行っても、戻ってきたい時はそうしなさい」と話しました。私はもちろん同僚のみんなも、将来の子どもたちのことを願って、戻ってこられる町を残したいと考えています。

  • 川本町 産業振興課

    川本町は、島根県の中央部に位置し、総面積106.43キロ平方メートルのほぼ菱形をしています。面積の約7%が可住地、約6%が水田・畑地、約72%が山林という中山間地域です。
    産業の振興作物はエゴマです。このエゴマは、シソ科の植物で、血液サラサラ効果や生活習慣病の予防になると言われる必須脂肪酸「α-リノレン酸」がたくさん含まれており、体内でEPAやDHAに変化することから、「畑の青魚」と呼ばれています。
    生産が始まってから10年が経過する中で、少しずつ栽培面積を増やし、川本町や生産者、地元の企業も一緒になって、エゴマの生産振興、6次産業化を進めています。
  • だからこそ、川本。川本町